steamの販売規制について考えを整理する

 近年のPCゲーム業界では、steamworks対応タイトルが増えてきており、steamのユーザーアカウント数も3000万を超えるほどに成長したsteamであるが、一方でsteamに対する不満も比例するかのように大きくなっている。

日本国内から上がっている不満の代表例が、「欲しいものが買えない」という不満だ。
例を挙げたらキリがないが、代表的なところを挙げると、EAのほとんどのタイトル、近年のActivisionのタイトル、SEGA全般、カプコンのほとんどのタイトルetc
大型タイトルほどその傾向が強く出る。
このポストでは、みんなが誤解していると思われるsteam規制について、整理していきたいと思う。
(なんか前にも書いた気がするけど、あらためて・・・)

はじめに

 わたしはゲーム業界の人間ではないので、ネットで調べた情報を元に推測を書いている。当然、間違っている事を書いているかもしれない。その場合は、是非とも指摘して頂きたい。

国内ユーザーから見るsteam規制とは何なのか

 まずsteam規制とは何か?というところを定義しておきたい。ここで言うsteam規制とは、他のリージョンでは買えるタイトルが、自分のリージョンでは買えない、ストアに表示されないという制限のことだ。日本以外のリージョンでも同様の事はあるが、日本はとりわけ規制のかかるタイトルが多い。これは日本マーケットの特殊性が関係してくると思われるが、詳細は後述する。

steam規制を決定しているのは誰か?

 ここで誤解をしてほしくないのは、「この地域では買えないようにする」というブラックリスト方式ではなく、「この地域ではこの価格で販売する」というホワイトリスト方式であるということ。規制という言葉を使っているので、誤解を生みやすいのだが、あくまでこの地域で売るという契約をパブリッシャーとValveの間で交わしているということ。

 ここで言うパブリッシャーは、メインの販売権を持つパブリッシャーを指す。大抵の場合、メインのパブリッシャーが全世界の販売権を持つが、個別の地域に関しては、他の地域パブリッシャーに販売権を与える契約をする場合がある。例を上げるならば、現在はActivisionのタイトルの日本国内販売権はスクエアエニックスが保持していると思われる(ただし、独占販売契約の発表はされていないので、基本合意に基づく個別契約だと思われる)。

結論を書いてしまえば、買えないように規制をしているのではなく、販売権がないので売ることが出来ないというのが正しい。

地域子会社の立ち位置について

 メインパブリッシャーの子会社が、日本国内に存在する場合と、しない場合は少し状況が変わってくる。子会社が存在するパブリッシャーと言えば、Electronic Arts(以下、EA)や比較的最近出来たTake Two(以下T2)などがそれにあたる。
 EAとT2ではそれぞれ日本国内の売り方に差異があるが、今までの流れからすると状況としてはほぼ同じと考えてよさそうである。

 EAJもT2Jもそれぞれメインパブリッシャーの完全な子会社であるので、ほぼ自動的に地域販売権が子会社の方へ移ってくる。コンシューマー向けのタイトルの場合は、それぞれ流通面でプラットフォーマーが面倒をみる事になっているので、流通に関して言えばさほどユーザーが気にすることはないのだが、PCゲームの場合は事情が異なる。PCゲームの場合は、いくつかの流通経路があり、それを選択して販売していくわけだ。

 EAJのほうは、自前のデジタルダウンロード販売とAmazonでのパッケージ販売に絞って流通させる方針を取っている。
 T2Jのほうは、PCゲームの販売に関しては、e-frontierが対応する方針のようだ。

 地域子会社が存在意義を見出すためには、売上を確保しないといけないわけだが、売上を確保するための武器は地域販売権しかない。その武器を最大限に活用する事を考えると、自前で確保した流通経路での売上を伸ばすための努力をせざるを得ない。契約する流通業者との契約の兼ね合いもあるだろう。そうなると組織としてはsteam等のワールドワイドなサービスから距離を置かざる得ない。
 ここで日本国内からのsteam上での売上を地域子会社の売上として計上出来るなら、話は変わってくるのだろうが、システム上そうはなっていないのだろう。(個別地域の売上がわかっとしても、一旦親会社の売上に計上されて、地域販売分の売上を子会社へ移し、さらに子会社から親会社に利益を戻すというのは馬鹿らしい)

 子会社である以上、メインパブリッシャーである親会社との距離は近いはずで、売上の計上の仕方などもう少し洗練されれば、状況としてはよくなるのかもしれない。

国内系パブリッシャーの方針

 国内系パブリッシャーとしては、SEGA、カプコン、スクエアエニックスといったところが大きいところとなるだろうか。SEGAとカプコンはほぼ同じような方針をとっている。一方スクエアエニックスは少々異なるスタンスである。
 先述では、販売権がないのでsteam上で売ることが出来ないと書いたが、国内系パブリッシャーは基本的に自社で販売権を持っており、それを行使しない場合について考える。

 SEGAとスクエアエニックスは、PCゲームではDRMとしてsteamworksを採用する方針を取っている。だが、SEGAはsteam上での日本国内販売は認めておらず、一方スクエアエニックスのタイトルは日本国内からの購入が可能となっている。
(スクエアエニックスがSteamでの販売規制をとっぱらったという自前のblog記事を探したが見当たらないので、書いてないのかもしれない。そのあたりの流れが知りたければググッてください。)

 カプコンも近年では稀に見るPCゲームを開発/販売している数少ない国産パブリッシャーでありデベロッパーであるが、steam上では国内から購入不可となっている(昔、カプコンがSteam上でゲームを売るようになった時のタイトルは日本からも買えるのだが、すぐに方針転換してしまった)。

 それぞれ別の会社の事なので、それぞれの方針に違いがあるのだろう。カプコンはそもそもsteamとの親和性よりはMSプラットフォームとの親和性を重要視している側面が強い(近年のほとんどのタイトルがGfWL対応だ)。そして、小売店との関係を重要視している側面も強いと思われる。ソフマップとか家電量販店に行くと、これでもかと言わんばかりにモンスターハンターフロンティアオンラインのパッケージが並んでいるのはそういう事だろう。

 セガの場合はカプコンと違い、扱う商品は基本的に自社開発タイトルではなく、海外デベロッパーの商品を販売する純粋なPCゲームパブリッシャーの側面が強い。代表的なタイトルを挙げると、Total Warシリーズや、Football Managerシリーズなどの、純粋なPCゲームを取り扱っている。2008年頃まではセガの事業部内でローカライズと販売を自社で行っていたが、方針転換により販売はZooが行うようになった。この事からも、自社で賄うにはコストがかかる上に回収ができないと判断したと思われる(商品自体、万人受けするようなタイトルではないし、国内マーケットも小さいし)。セガ内部の事であるから、完全な想像であるのだが、セガのPCゲーム部門の本体は羽田ではなくSEGA of AmericaとかSEGA of Europeにあるのだと思う。そう考えると、羽田のセガPCゲーム部門は、地域子会社的な扱いなのかもしれないな。

 それぞれの事情から、steam上では販売権を行使しない方針を取る国内系パブリッシャーは、パッケージ販売のほうが付加価値が高く、利益が大きいと踏んでいると考えられる。
 状況が変わるとすれば、steam等のサードパーティで国内販売解禁したほうが利益が大きいと判断される時である。

まとめ?

 まとめると、同じようにsteam上で日本国内から買えないタイトルがあっても、それぞれの事情の違いで「売ることが出来ない」場合と「売ることをしない」場合とで異なるわけだ。
 状況変化を希望するのであれば、国内マーケットを徐々にダウンロード販売へシフトしていくように、ユーザーが「売上面」で変えていく必要があるだろう。そうすればパブリッシャー側も対応せざるを得なくなる。

以上