相撲と八百長とプロレスの話

 最近は、相撲の八百長問題がニュースのトップに来ることが多いわけです。で、テレビを見ていると、モザイクのかかった人たちが「八百長なんて昔からあったよ」という話がゴロゴロと出てくるわけです。どこまで本当に取材に答えているのか、若干疑いの目を持って見ても、まぁー昔から八百長あったんでしょうな、という印象は拭えないわけです。
 同時にある違和感も感じるのです。相撲と八百長という話が結びついて表に出てきたのは、元小結の板井という人が外国特派員協会での共同記者会見の場で、「昔から八百長はあるし、みんなやってた」という話をしたときでしょうか。時は2001年、この話を目にしたのはこの時がたぶん最初。
 私は知らないが、それ以前にも週刊誌で相撲と八百長の話が取り上げられた事はあったんだろうな。でも私にとっては、板井という人のインパクトが強かった。

 その後、週刊現代だかで相撲と八百長にまつわるキャンペーンが行われるわけだが、相撲協会はそんな事は絶対にない、として名誉毀損を訴えて裁判になるわけです。裁判は相撲協会側が勝つことになるのだけど、裁判所が認めたのは、週刊現代側が事実とするには根拠が薄いという事で、裁判所が八百長はありませんでしたという判定を下したわけではないので注意。だから今の相撲協会理事長が、昔は八百長なんて絶対なかった、それは裁判でも明らかになっているというのは、間違いなのです。

 で、3年ぐらい前かな、先述の板井氏がテレビに出ていて、やはり八百長の話をしていたのを思い出した。その時言われていたことは、「星の譲り合いは日常茶飯事で、それが悪いことだという認識は持っていない」、「最近はガチンコでやってる方が多い、取り組みを見てればわかる」ということ。前者は、人情相撲に代表されるような話。後者は、昔は八百長多かったけど、最近は少なくなったねというお話。3年ぐらい前の話です。

 人情相撲を一応補足しておくと、歌舞伎にも出てくるお話だけど、一般的な解釈で言うと、勝ち越しが決まった力士と、勝ち越しギリギリの力士が対戦したとき、勝ち越しが決まった方の力士が、力を抜いて相手に勝たせるようにする相撲を指す。これを八百長と呼ぶべきかどうかは、意見がわかれるところではある。板井氏が話をしていたのは、この人情相撲の話をふんだんに含んでいた。

 一方で、今月は金に困っているから、星を売っている力士も居るという話もあった。こちらはまごうなきまでの八百長ですわな。

 で、八百長を一切しない力士ってのもいるよという話はたびたび目にした。ネットでね。例えば、貴乃花(弟の息子)がそうだ。あとは大乃国(スイーツ)とか。2000年移行、力士が怪我をするという事が多くなってきたのは事実で、最近の力士は怪我ばっかりするのは、稽古をしっかりやらないからだっ!という相撲ファンの意見が目立っていたけど、板井氏の話を鑑みて考えるに、ガチンコでぶつかることが多くなってきたから、怪我が増えてきたんじゃねーの?という意見に達するよね。

 そう。ガチで格闘技やると、怪我が多くなるのはあたりまえだよね。相撲は年間6場所、計90の取り組みをお相撲さんは取ることになる(十両以上)。全部をガチンコでやってたら体持ちませんよ、ボクシングを見てごらんなさい、トップクラスの選手同士がぶつかるのは、年間2,3試合でしょう。

 同じ格闘技に分類していいのかわからんけど、プロレスを考えてみよう。プロレス=八百長とはここでは言いません。プロレス=エンターテイメントショーだともここでは言いません。プロレス=エンターテイメントショーと明言しているのは、WWEだけです。日本のプロレス団体はそんな事言ってません。(あ、言ってるところもあるけど、よく知らないわ)

 プロレスには試合の勝敗だけでなく、試合の流れやらが事前に決められているという「ブック」というのが存在しているというのが、一般的に知られているわけです。まー否定はできませんわね(してたりするけどさ)。当然、ファンもその事は十分知っているわけです。力道山の頃のような昔はそんな事は知っていなかったかもしれないけど、ターザン山本が週刊プロレス編集長やっていた頃より後は、だいたいファンも知っていたわけですよ。今、プロレスファンを公言する人は、ブックがないとか言う人はほとんどいないでしょ?その上で、プロレスが大好きな人が、少なくはなったけど、確実にいることは確かなのです。

 ちなみに、プロレスは全部が全部ブックで片付くほど単純ではなかったりします。たまーに、プロレスの体を成した、ガチンコが展開されることがあったりします。その場合、大抵会場にいるファンはわかります。「あ、やべぇ、これガチじゃん」と。リングでガチンコを繰り広げる選手の空気よりも、それを見ている周りの選手の空気が一変してしまうのですね。はい。

 ちなみに、プロレスとはちょっとだけ離れますが、アントニオ猪木vsモハメド・アリによる異種格闘技戦というのがありました。1970年代のことで、当時「世紀の凡戦」と呼ばれた試合です。私はまだ生まれていないので、当然リアルタイムで見たわけではないのですが、当時の関係者の証言やらなんやらをまとめ上げると、どうやらガチンコの試合だったようで。正確には、アリは当初オファーを受けたとき、ショーだと思っていたらしいのですが、猪木はガチでやると決めていたそうで、アリ側はガチはマズイということで、試合直前になってルール変更やらなんやらの駆け引きにより、アリが有利なルールで試合をすることになったというお話らしいです。まぁーこのへんの話は、ぐぐればいくらでも出てくる話だし、真実はよくわからんという事もありますんで、話を相撲に戻します。

 今、相撲は大変な岐路に立たされているという事になっているそうで。それを煽るマスコミとそれに乗っかる自称・相撲ファンと、その顛末が面白くて騒ぎ立てる外野席の人々(私も含む)が注目する今後の流れだけども、大変革が来るかというとそんなものはこないでしょーという印象。

 大変革は2つの方向性が考えられて、1つはガチンコ当たり前の競技スポーツ化。もうひとつは文化的側面を重視した、興行型ショービジネス。現在はこのあたりがうやむやになっているからおかしなことになるので、どっちかの方向に進むしかないと思うわけです。
 競技スポーツ化は、確か貴乃花親方が目指していた方向性だったような、違うかな。興行型ショービジネスにシフトする方向は個人的にはないかなーなんて思っていたり。

 まぁー最終的には、改革の名のもとに「で、何が変わったのかよくわからんのだけど」という結論に達するんじゃないでしょうか。